契約不適合責任

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①売主の契約不適合責任 

※2020年4月の民法改正により、瑕疵担保責任 → 契約不適合責任に変更となりました。
2020年8月:瑕疵担保責任の内容とは若干の変更がありますが、追加・修正中です。

購入した不動産に隠れた欠陥などがあり、価格・品質・条件等、契約の内容に適合しない物件のことです。
例えば、購入した不動産に雨漏りや白アリの被害が見つかり、補修に多大な費用を要する場合、不動産の
売買価格に対して、品質を満たしていないという事になりますので、原則として売主に補修義務が発生します。

これを売主の契約不適合責任と言いますが、中古住宅売買においてトラブルが多い事項の1つです。

※不具合があれば何でも売主の責任だ!と勘違いされている方もいるようですが、誰の目から見ても欠陥が
ある事は明確で、それを前提とした価格で売買する場合は契約不適合には該当しません。
(雨漏りや建物の傾きがあっても、それを告知した上で相応の価格で売買すれば契約不適合にはなりません)

考え方としては、欠陥があると価格に見合った物件の価値が無くなるため、その分を金銭等で補う目的で
契約不適合責任があります。

ところで、一般的に新しい建物は不具合が少ないから価格を高く、古い物件は不具合が多いから価格を安く
設定します。そして、見えている欠陥やちょっと注意すれば分かる欠陥があれば、それを前提とした売買価格を
提示しますので、原則として売主は契約不適合責任を負いません。

不具合があるのを前提として売買価格を安く設定しているのに、引渡し後の不具合は売主が全て補修する・・。
というのは変だという事は常識で考えれば分かると思います。

不具合があれば何でも契約不適合責任だ!という主張が正当事由として通るとしたら、そもそも中古住宅の
売買自体が成立しませんから。

例外は、売主が物件に瑕疵(隠れた欠陥)がある事を知っていながら隠していた場合です。
例えば、雨漏りや白アリ被害、自殺などがある事を知っていながら告知しなかった場合は、売主は契約不適合
責任を免れる事は出来なくなります。

なお、従前の瑕疵担保責任とは異なり、法律上は「隠れているかどうかは問わない」となっていますが、
実務上は、ちょっと注意した位では発見が困難な不具合に対して契約不適合責任を付加する事になります。
そうでないと辻褄が合わなくなりますので、実務では民法の原則通りにいかない事も多々あります。

※ちなみに、過去にあった自殺や事故・火災などは心理的瑕疵にあたります。
バレなきゃいいや・・と思って売主が事故物件である事実を隠すと、契約後にその事実が発覚した場合に
仲介者の不動産会社だけでなく売主も責任追求される事になります。

これは契約不適合免責特約付きで契約をしても、知っていながら隠していた瑕疵までは免責されません。
事実は隠さずにきちんと話しましょう。

②契約不適合責任の期間

売主の契約不適合責任期間は、宅建業者が売主の場合、引渡しの時から2年間以上ですが、宅建業者
以外が売主の場合は、2ヶ月~3ヶ月が一般的です。(宅建協会の書式では2ヶ月、FRK書式では3ヶ月)
新築住宅の場合、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について10年です。

この辺りは、民法上の規定と宅建業法、品格法等の規定が異なります。

給湯器などの付帯設備に契約不適合責任を付加する場合、消耗品なので長くても数ヶ月程度です。
実務では、付帯設備の劣化状況も考慮して、売主・買主に確認を取り期間を決めています。

③契約不適合責任の範囲

どんな欠陥でも売主に契約不適合責任が発生するわけではありません。
中古住宅売買では、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に限定する事が多いです。
住宅設備などの消耗品に契約不適合責任期間を設ける場合、値引き等で対応し、引渡し後の故障は
買主の責任と負担で修理・交換してもらうケースが多いです。

「構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分」の定義は、住宅の品質確保の促進等に関する
法律施工令第5条に記載されていますが、簡単に説明すると、建物の基礎、土台、梁、壁、柱、屋根、
給排水管等、ちょっと注意したくらいでは分からない隠れていて見えない部分です。

また、宅建業者が売主の場合と、宅建業者以外が売主の場合では異なり、新築の場合と中古住宅の場合
でも変わってきます。ちょっとややこしいのですが・・。

不動産会社が売主の場合は、一般人が売主の仲介よりも責任が重くなり、原則として付帯設備についても契約
不適合責任が及ぶとされていますが、実務では、設備も瑕疵に含める場合もあれば、その分を値引きで対処
する場合もあり、ケースバイケースです。民法や宅建業法の原則通りにいかない事もあります。

ただし、付帯設備に関しては、後々のトラブルを避けるために、売主に設備の利用状況等を付帯設備表に
記入してもらい、分かっている不具合があれば契約時に買主に対して説明をします。

当社が売主の中古住宅の場合だと、付帯設備が古ければ新品に交換して販売しています。
また、引渡し時に各設備が正常に動作する状態で引渡しをしています。

中古住宅売買では、契約不適合責任の範囲を、①雨漏り、②白ありの害、③構造上主要な部分の木部の
腐食、④給配水管の故障等・・の4大項目に限定する場合もあります。また、不動産業者はプロだから責任が
重く、一般人は素人だから責任が軽いという考え方もあります。

④契約不適合免責特約について

「契約不適合責任は一切負いません」という特約の事を、契約不適合免責特約と言います。
建物の築年数が経過していると、瑕疵(欠陥)が出てくるものなので、ある程度築年数が経過した建物の
場合には、瑕疵担保免責特約を付ける事もあります。

この件ついて、売主が一般人の場合は、「契約不適合の責任は一切負いません」という特約も、売主買主の
双方が合意すれば有効ですが、売主が宅地建物取引業者の場合、「契約不適合責任は一切負いません」
と記載しても特約は無効となります。

ちなみに、売主が隠れた瑕疵があるのを知っていながら黙っていた場合も、契約不適合免責特約は無効です。
これも売主が業者か一般人かは関係ありません。自殺など心理的瑕疵があるのを隠すと、後から買主がその
事実を知った時に損害賠償請求等をされる可能性がありますから注意しましょう。

では、買主が購入後に適切な維持・管理を怠った為に発生した不具合の場合はどうなのでしょうか。

例えば、ベランダの防水が必要である事を伝えているのに、防水をしなかったため雨漏りが発生した場合とか、
室内の換気をしなかった為に起きた内部結露などが該当しますが、購入後に買主が手入れを怠ったり適切な
維持・管理・使用方法をしなかった為に発生した不具合まで売主が責任を負うのは変ですよね。

売主の契約不適合ではなく、買主が適切な管理を怠っただけですから、買主に修復費用が発生します。
2020年に発生した台風15号、19号のような大型台風による被害も、売主の契約不適合とは別問題です。

この辺りは常識的に考えてどうなのかという事です。

以上、契約不適合責任の考え方について、実務上の対応もふまえて書いてみました。